BARI
Ş MANÇO BEST ALBUMバルシュ・マンチョ ベスト アルバム
燃える恋心
ふるさとは世界
ピンクの薔薇
忘れられない
トマト ピーマン ナス
ミントとレモンの皮
カフスボタン
再生のとき
山脈
あかりを消して
熊
解説
バルシュ・マンチョの魅力
トルコのポピュラー音楽の先導者として常に最先端で活躍を続けてきた、トルコが誇るスーパースター、それがバルシュ・マンチョだ。今日では単に作曲・演奏活動にとどまらず、TVプロデューサー、司会者、コメンテーターとしても活躍し、新聞にコラムも持っている。トレードマークの肩までかかるロングヘアーをテレビや新聞で見ない日はない。
1943年イスタンブールに生まれたバルシュ・マンチョは、1958年のデビュー以来、トルコ・ロックの先駆者として、バンド『クルラタン・エキスプレス』を引き連れて、作曲・演奏活動を繰り広げてきた。彼の作品は200曲以上にものぼり、12の『ゴールド・レコード賞』と一つの『プラチナ・レコード賞』を獲得していることをみても、彼の作品がいかに多くの人々の心をとらえてきたかが分かる。その長い音楽活動の中で生まれた名曲の数々は、時代を越えて愛され、歌い継がれてきた。今でも、彼の歌がテレビやラジオから流れてくると、誰もがそのときの自分の青春を重ね合わせ、懐かしさを込めて口ずさむ。トルコの人々にとっては、彼の歌は決してすたれることのない普遍性を持った愛唱歌でもある。
世界中に吹き抜けたロックの旋風の追い風に乗りながら、トルコ風のオリジナルなロック・サウンドを確立してきたバルシュ・マンチョ。彼の作品のほとんどすべてが彼自身の作詞・作曲による。詩の内容は、切なく哀しい恋の歌、コミカルな歌、はたまた政治家に対する風刺とさまざまだが、バルシュ・マンチョの人柄をよく表して、ヒューマンな優しさに満ちたものばかりだ。それが、彼の歌が年齢を問わず幅広い層に愛され続けてきた所以でもある。
そう、彼の人気の最大の秘訣は、何と言ってもその温かく飾らない人柄にある。これほどのスーパースターならば、普通なら庶民には近付き難い存在だが、彼は気取ったところが少しもなく、街で彼を見かけた人たちが「バルシュさん、お元気ですか。今日はどちらへ」と気軽に声を掛けてくる。彼のほうも「やあ、君の方こそ元気でやっているかい。仕事の調子はどう?」といった具合だ。あまりにも親しげな口調なので、知り合いなのかと思えば初めて会った人だという。スーパースターに道端でこんなふうに声を掛けられたら、誰だって嬉しい。
トルコのミュージシャンとしては初の日本全国ツアー。バルシュ・マンチョは行く先々で、言語の壁を乗り越えて、愛と友情と平和(バルシュとはトルコ語で「平和」の意味)の熱いメッセージをステージから、いや、きっと街角からも送ってくれることだろう。愛や友情を伝えるのに言葉はいらない。彼はそのことを当の昔から体現してきたのである。
トルコ音楽研究家
細川 直子
[
歌詞対訳]なんと説明したらいいのか 僕には分からない 胸が張り裂けそうだ
あの気が狂ったみたいな 喜びではち切れそうな奴は 僕じゃないみたい
外は氷のように寒く雪が降りしきる だけど僕の心は燃えさかる
マイナス
40度の冷たい水の中でも泳ぐことができる 本当さ燃える恋心 燃える恋心 ほかになんて言ったらいい?
燃える恋心 燃える恋心 僕を君から引き離すなんて誰にできる?
子供じみた恋だなんて片付けないで こんな僕を笑ったりしないで
恋がどんなものかなんて分からなかった でも好きなんだ君が 気が狂ったみたいに
なんと説明したらいいのか 僕には分からない 目の前が真っ暗になる
世界はひっくり返ってまっさかさまになったみたいだ
恋人たちはみんな手を取り合い 腕を組んで歩いているけど
僕ときたらノアの箱舟にひとりぼっちで取り残されたみたい 本当さ
燃える恋心 燃える恋心
(以下繰り返し)物心ついたころからこのかた 長い私の人生は いつも旅の空にあった
この仮の世の隅から隅まで旅をした
学のある奴ない奴 金のある奴ない奴 人はみな同じ
私も苦労してやっといろんなことが分かった
人間性なんてものはまるで市場で安売りされて 人生はいつだって強者のもの
熱いスープをどうぞ と言ってくれる人はいない
四方に壁を作り 屋根を葺き 中から鍵を掛けてとじこもるだけで
どうぞ泊まってお行きなさい と言ってくれる人はいない
聞くことは一つだけ 「おまえさん お国はどちら?」
「世界さ 僕のふるさとは」
「いやいや わからなかったね 本当のところ 出身はどこだい?」
「だから言ったじゃないか 世界さ 僕のふるさとは」
ああ ああ ああ
人はみな兄弟だとか同等だとか 長々と演説するくせに
「どうして君の肌は僕のより黒いの」と言う奴はいっぱいいる
戦争で同じ「死」に向かって殺し合うのに
残された女子供を誰が養うのかと聞く人はいやしない
哀れなバルシュは結局答えが見つからず だからペンを取ってこの歌を作った
「さあ みんなお互いに理解し合おう」と言う人がいることを願って
どうせこの世はバラバラになって 住めるようなところではなくなってしまった
もうこれ以上バラバラにする必要なんかないはずだ
聞くことは一つだけ 「おまえさん お国はどちら?」
だから言ったじゃないか 「世界さ 僕のふるさとは」
「いやいや わからなかったね 本当のところ 出身はどこだい?」
「世界さ 僕のふるさとは」
ああ ああ ああ
君が笑うと 花も開く ピンクの薔薇
うぐいすたちは君の歌を歌う 僕たちはその歌を聞いたものだ ピンクの薔薇
君が来ると 春が来る ピンクの薔薇
渓流は君のために流れる 僕たちはいつも嬉しかった ピンクの薔薇
だけど秋の雨のある日 君はあの世へ行ってしまった 信じられなかったよ ピンクの薔薇
僕たちの街は静まり返った 僕たちの街は静まり返った あんまりだよ ピンクの薔薇
僕の唇に最後の歌 ピンクの薔薇
今でも君のためだけに歌う 君を呼んでいる ピンクの薔薇
僕の瞳の最後の雲 ピンクの薔薇
今でも君だけを探している 君を待っている ピンクの薔薇
僕の唇に最後の歌 ピンクの薔薇
今でも君のためだけに歌う 君を呼んでいる ピンクの薔薇
昨日僕はまたひとりぼっちで 街にさまよい出た
雨に濡れた ひとっ子一人いない路地に
瞳には涙 心はひりひり痛む 君が忘れられない
忘れられない 忘れられない どうか分かってほしい
忘れるのは簡単と 君は言ったね
すぐ慣れるわと 君は言った
それなら もう僕のことは忘れてほしい
僕に何も望まないでほしい
瞳には涙 心はひりひり痛む 君が忘れられない
忘れられない 忘れられない どうか分かってほしい
歳月は僕たちからたくさんのものを奪っていった
君が新しい家庭を作るとき 僕はばらばらになってしまった
瞳には涙 心はひりひり痛む 君が忘れられない
忘れられない 忘れられない どうか分かってほしい
僕の気持ちを君にすべて 説明することができていたなら
気が狂ったみたいに君が好きだと 言えていたなら
目と目が合ったその瞬間に
まるで舌が麻痺してしまった 一瞬のうちに
君の前で何も言えなかったんだ
だから ありったけの勇気を奮い起こして 君のところへきたのさ
君を思って高鳴るこの心を 分かってもらおうと思って
手を取ろうとしたちょうどその時
愛を告白しようとしたちょうどその時
路地から聞こえてきたその声で 世界は崩れ去った
トマトにピーマンにナスはいらんかねー
トマトにピーマンにナスはいらんかねー
一瞬のうちに世界が真っ暗になった
その声は路地に響き渡った
トマト ピーマン ナス
今 君はすごく遠くにいる 知っているよ
もしかしたらいつか戻ってくるかもしれないと 神に祈っているんだ
君にもう一度会えたら それだけでいい
本当だよ 残りの人生と引き替えにしてもいい
何も望まない この夢が終わりさえしなければ
どこへ行っても 何を見ても 君がそこにいる
分かっている もう遅すぎるって それでも僕は待っているんだ
何もかもが僕にとっては無意味なもの
君をしっかり抱き締めたい
何も望まない もう二度と僕の世界が崩れさえしなければ
トマト ピーマン ナス
トマト ピーマン ナス
(
インストゥルメンタル)昔の人は正しかった
花一輪では春とは言えない
人を知るには いろんな人に尋ねなくては
これは生死に関わる問題 遊びなんかじゃないさ
お上品ぶって 冬のさなかに白い薄物を着る人たち
とうとう風邪を引いて困ったときには
さあいらっしゃい 僕の言うことを良く聞くことさ
ノートと鉛筆はあるかい ちゃんと書いとくんだよ
ミントとレモンの皮を
よく煮立てて おっと ハ ハ ハ ハ
中に薬草とクロタネソウの種を少し入れて おっと ハ ハ ハ ハ
さらに少しシナモン それからショウガをひとつまみ おっと ハ ハ ハ ハ
万病に効く薬ができるよ もう少しの辛抱さ ハ ハ ハ ハクション!
おだいじに
(ありがとう) 長生きするんだよバルシュは自分のことはほんの少しで
他の人のことばかりあれこれ口うるさく意見する
大きな袋から知恵を取り出していろんな人に分け与えるのもいいが
自分のことも少しは顧みたほうがいいよ
お上品ぶって 冬のさなかに白い薄物を着る人たち
(
以下繰り返し)僕は思い出すだろう 今夜のように
音もなく過ぎ去った最後の夜のことを
まるで罪人のように首をうなだれて
僕にくれた贈り物のことを
二つの小さなカフスボタン
ある恋の物語
二つのカフスボタンは 二つの腕で離ればなれ
僕たちのように別れ別れ
夜になると 僕は何もかもを黙らせる
僕のカフスボタンが一緒になれるときがやってくる
そおっととりはずして 箱に並べて入れよう
こんな拷問はもうたくさんだ ずっと一緒にいさせてやろうよ
けれど なんと悲しいことか 朝になると別れて
夜だけ一緒になれる二人
目に涙を溜めて別れる二人
カフスボタンのように 僕たちのように
僕たちのように 別れていく二人
僕たちのように 別れていく二人
とっくに朝が来た そして僕は
漆黒の夜の闇の中で 待っている
僕には聞こえる 僕には見える
いつか必ず来る 再生のときが 僕には分かる
漆黒の夜のふところに僕はいる ひとりぼっちで
でも はるか彼方のどこかで 歌が聞こえる
僕には分かる 再生のときが
ひび割れた唇からは 声もなく 息すら洩れてこない
でも はるか彼方のどこかで 太陽が昇る
僕には聞こえる 僕には見える 僕には分かる
再生のとき 再生のとき
太陽が昇るとき それは再生のとき
再生のとき
10.山脈
僕の手で大きくなった
枯れそうなときに僕が生き返らせた
その花を君は摘んで
他の人にあげてしまった
山脈 山脈 僕の命と引き替えにしてもいい 彼女のもとへ連れていってくれ
愛する君を最後に一目 近くで見させてほしい
鳥も飛ばず 薔薇の花は枯れてしまった
高い山脈は深い霧のなか
山の向こうの君のいるところでは
悪い知らせがあるにちがいない
山脈 山脈 僕の命と引き替えにしてもいい 彼女のもとへ連れていってくれ
愛する君を最後に一目 近くで見させてほしい
11.あかりを消して
あかりを消して
ふっと息を吹き掛けて
カーテンを閉めて
あけるんじゃなくて 閉めるんだ
憲兵がやって来る
憲兵か踏み込んでくる
見つかってしまうよ
掴まってしまうよ
あかりを消して
ふっと息を吹き掛けて
カーテンを閉めて
あけるんじゃなくて 閉めるんだ
12.熊
今日は天気がいい 女房に言ったのさ さあ起きて服を着たら 出掛けよう
ほら 鳥たちがチュンチュン鳴いている 枝にはウメの実とさくらんぼ
子供たちもみんな揃って ピクニックに行こうよ どう思う?
家の者たちは大喜び 「わーい われらがおとうさん 万歳!」
道々考えた 子供たちは動物を知らない
正直いって こりゃいかんと思った 父親として決心した
突然
Uターンして まっすぐ動物園へ!こんなに大勢で押しかけて 失礼だとは思いました 裁判官殿
でもなんとか中へ入った
ほら 息子たち これは熊と言うんだよ 森から出てきて 町へやってくるんだ
重くてのそのそしている でも洋梨のいいのを食っちまうんだ
もしある日 洋梨のいいのを食べたくなったとしても
まちがっても くだもの屋へ行って洋梨を一つ一つ手にとったりしちゃだめだ
いつも物静かな誰かがひとたび怒ったら 口数の少ない人が喋り出したら
おまえに何を言い出すか 知っているか? 街中の人が聞いて恥をさらすことになるよ
A
って言ってごらんA 次にYって言ってごらんY 今度はI I読んでごらん
A Y I 読んでごらん A Y I私の目的は 人生の困難な道について 子供たちに学んでもらうこと
誰にももぎ取られちゃいけないのさ 考える頭も行動する手も
だから父親としての義務は もちろん 目を覚まさせて注意を喚起すること
遠くは見えないものです 裁判官殿 近いところから説明しなければならないのです
動物を愛することはもちろん必要 だがものの道理は 見返りがあってはじめて通用する
僕は君を愛そう だから君だって僕のことを尊敬しなくちゃ
せっかくの僕たちの気持ちをぶち壊さないために
洋梨のいいのはどうせ熊が食べてしまう 片方の手はバター もう一方には蜂蜜
もう我慢の限界にきました 裁判官殿 判決はあなたのものです
私たちからはノーサンキュー!
(
対訳 : 細川直子)